名取式のこと

名取式のことを、記しておきます。

「名取式」
師匠とともに、家元のお家にお伺いし、
家元・藤間勘右衞門様と杯を交わし、
名取のお免状とお札をいただく式です。


2005年9月6日火曜日。私はその時を迎えました。


当日朝。普段の着物を着て、まずはお稽古場に足を運びます。

いつもの夏モノの着物姿で
お稽古場の玄関で携帯自分撮影(笑)






師匠のお母様、藤間真起子先生が
お式に着て行く着物の御着付けをしてくださるのです。



お恥ずかしいお話なのですが、
私は、9月という難しい季節に、
名取式に着ていくのにふさわしい着物を持っていませんでした。
(注:9月は単衣の着物です!!)


この悩みには、私の周りの、素晴らしく優しい方々が協力してくださり、
私より背が高い舞踊家さんが、一式、私にお貸しくださいました(T^T).


そのお陰で私は胸を張って御式に臨むことができたのです・・
この場をお借りして心より感謝申し上げます。


と、いうわけで、その、お借りしたお着物は、単衣の紋付。
とても美しい藤の花をあしらった紋が背中に。
帯は金糸の藤の模様。



素晴らしいお着物を、真起子先生が、
素晴らしいテクニックで御着付けしてくださいました。
力の入れ加減、紐の締めどころ・・・もう何から何まで素晴らしい。
今まで、美容院や、NHKの衣裳さん、京都の撮影所の衣裳さんなど
いろんな方に着付けをしてもらいましたが、
こんな素晴らしい、心地よいお着付けをしていただいたのは本当に初めて!!



私に着物を着せてくださりながら、真起子先生が色々なお話をしてくださいます。


私は真起子先生に身をまかせつつ・・・


「あ。今。すごい。幸せだな」
と思いました。
涙がこみ上げそうになるほど、温かく幸せな時間でした。



「たっちゃん。ほら。できたわよ。見て(^^)」
真起子先生が、達也先生をお呼びになりました。



くるりと一回転して、笑顔で達也先生に着物姿を見せる私。


この時の達也先生のコメント、私、これまた一生忘れません。
しばし、私の事をご覧になり・・・
一言。


「うん。」


「うん。」うん、だけか〜〜(笑)。
「うん」が全てでした(^^;)。


真起子先生がご用意いただいたお赤飯で
軽い昼食をとらせていただき、
その後、達也先生が紋付に着替えなさってる間に、
「真起子先生直伝名取式リハーサル」です。


御懐紙の使い方、杯の持ち方、置き方、飲み方、
歩き方、お免状・お札の頂き方・・


俄に緊張がこみ上げます。


そうしている間に達也先生のお着替えがお済になりました。
(やはり、正装なさってる時の先生は、
めちゃめちゃカッコイイです。)



真起子先生に見送られ、達也先生と私は家元のお家へ向かいました。



飛び切り立派な門構えの大きなお家。
はっぴを着た番頭さん(?)が履物の整理をなさってます。


広い控えの間に入ると、美しい着物を着た女性たちと、
凛々しい袴姿の男性がずらりと座ってお茶を召し上がっています。
なんとも華やかな空間がそこに・・・。



達也先生が、色々なお師匠様のところへご挨拶へ向かわれるので、
後ろからチョコチョコとついていき、一緒にご挨拶します。
このとき、色々なお師匠様が
「こちらが達也さんの新名取さん?おめでとうございます」
とお声をかけてくださいます。



名取式はいくつかの「組」に分かれて行われます。
自分が呼ばれるまで、控えの間で座って待機です。



途中、いちどお化粧室にたった時のことです。


振袖姿の若い新名取さんがお化粧を直しておられました。


私:「おめでとうございます。」
若い彼女:「おめでとうございます・・・あの・・。」
私:「はい?」
若い彼女:「・・・新・・・名取さん・・・ですか??」
私:「はい。」
若い彼女:「え〜〜そうなんですか?!あまりに堂々となさってるので
どこかのお師匠様なんだと思ってました♪(^^)」


がーん。


・・・(^^:)初々しさがなかったらしいです・・・・。



「では○○さん、達也さん。お願いします。」


お師匠様のお名前で呼ばれ、
○○先生のご門下ご一同様のあと、
達也先生と私が続きます。



手に持った荷物をすべて棚に置いて、
和室の控えの間で名取式についての最終説明が係りの方からされます。
ここで、名取式の席の順番に座りますが
この順番を読み上げて下さる時、
初めて「絢也さん」と呼ばれます。


ここで待つ10分ほどの時間がとても長く感じられます。


いよいよです。


立ち上がって、
達也先生に、私の着物をチェックしていただき、
「うん。大丈夫」というお墨付きをいただいて、



いざ。御式へ。



広い広いとても清々しい空間。
家元と藤間勘左先生が私たちを出迎えてくださいます。


まずは家元・藤間勘右衞門様が杯を口にされます。
その後家元の奥様によりその杯が運ばれ、
お師匠様・新名取、の順に杯を頂きます。



御懐紙を使う手がおぼつかなかった私ですが、なんとかこなしました。


そして、お札とお免状をいただきに、ひとりずつ、家元の前に進みます。



家元はお渡しくださるとき、
私たちひとりひとりの目をまっすぐご覧になり、
はっきりとしたお声で
「おめでとうございます」
と言って下さいます。


私も、まっすぐと家元の御目に目線を合せ、
しっかりとした声で申し上げました。
「ありがとうございます」



席に戻ると、美しい器で御蕎麦が運ばれてきます。
この「一口サイズの御蕎麦」を頂くのが藤間流勘右衞門派の伝統なのだそうです。
凛々しい袴姿の男性舞踊家の皆様が
美しい身のこなしでお給仕してくださる様は
見ごたえがあります。



するり、と御蕎麦をいただき、お茶をいただき・・。


最後に、それぞれ家元との写真撮影を済ませ・・


名取式は終わりました。


御式そのものは、20分程度でしたが、大変、緊張する時間であり、
また、とてもとても楽しい時間でした。



家元のお家を出てから、
「楽しかった楽しかった♪もう一度やりたい♪」
と、ぴょんぴょんとはしゃぐ私に
達也先生が笑いながら仰いました。


「珍しいひとだねえ。
普通は、緊張して何が何だかわからなかった
、なんて言うんだよ。
でももう一度、はないからね。
こればっかりは本当に一生に一度だから。
結婚式はね、何度も出来るかもしれないけど(笑)、
名取式は本当に一度だけだからね。



一生に一度。



この貴重な時間を過ごし、私はこの日、藤間絢也になりました。

☆「藤間絢也」としての最初の写真です☆


写真、向かって私の右が家元・藤間勘右衞門さま。
           左が師匠・藤間達也先生。

家元のお顔を、私のHPに載せるのはあまりに恐れ多いので・・・

「達也先生はいいじゃない?なんで切っちゃったの?」
というお声はごもっともなのですが・・・(^^;)


以下の会話で全て、お察し下さい。




この写真を頂いた日のこと。


まず封筒を受け取り・・・
開ける前に・・・

絢也:「・・・・どうです?写真。イケてます?」

達也先生:「・・・・・ダメ・・・(T^T)」

絢也:「ええ〜〜っ!!!ショック〜〜!(T^T)」

達也先生:「いや!違う!あなたは綺麗に写ってる!
ウチの母親(真起子先生)も
                 さすが写真写りがいいわねえ、ってとても褒めてた(^^)」

絢也:「・・・・じゃ何が・・・」

達也先生:「・・・・オレが・・・ダメ・・・(T^T)」

絢也:「・・・・どうダメなんですか・・?」

達也先生:「・・・見ればわかる・・・(T^T)・・・」




見ました。




達也先生の目線が・・・お、おかしい!!!!




絢也:「!!!!先生・・・何これ!?どこ見てるんですか?!」

達也先生:「・・なんかね・・うっかりカメラを見るの忘れて・・
     自分の真正面を見ちゃったんだよ・・・」



つまり・・達也先生だけが・・・カメラのレンズを見ておられず・・・
明後日の方向をご覧になってる状態でして・・・。



絢也:「・・・・先生・・・これじゃあ・・やる気がないみたいじゃないですか・・」

達也先生:「ホントだよね。あははは。」

絢也:「・・・きっと写真屋さんも困りましたね・・」

達也先生:「目玉は修正できないもんなあ・・流石に・・」


※先輩方の名取り式のお写真を拝見しても、
こんなふうになっちゃったのは一つもありません・・。
あくまでエピソードクイーンの私・・。


思い出深い写真となりました(^^)。

トップへ
トップへ
戻る
戻る